

「デジタルマルチメーターを選びたいけれど、どれも似たように見えて違いがわからない」「使わなくなったデジタルマルチメーター、売るといくらになるのだろう」——デジタルマルチメーターは電気・電子機器の現場で最も身近な測定器でありながら、確度や測定レンジといった仕様の違いが分かりにくく、選定にも売却にも迷いやすい機器です。本記事では、デジタルマルチメーターを選ぶ際に押さえておきたいポイント、用途別のおすすめ、安全上の注意点、そして買取相場を左右する要素と実際の相場感まで、あわせて解説します。あわせて、筆者がデバッグ作業中にテストリードを破損させ、処分してしまった経験もご紹介します。
測定器全般の買取相場の考え方については測定器の買取相場はどう決まる?高く売るための5つのポイントもあわせてご参照ください。
デジタルマルチメーターとは
デジタルマルチメーターとは、電圧・電流・抵抗といった電気の基本的な物理量を、1台で測定できる測定器です。テスターとも呼ばれ、電気工事の現場から研究開発の実験室まで、極めて幅広い場面で使用されています。アナログメーターに比べて表示が数値で読み取りやすく、誤読が少ないことから、現在ではデジタル方式が主流になっています。ポケットに収まる小型のものから、実験室に据え置くベンチ型まで形状も多様で、価格帯も数千円から数十万円まで幅広く存在します。
デジタルマルチメーターと他の測定器との違い
クランプメーターとの違い
クランプメーターは、導線をクランプ(挟み込む)するだけで、配線を切断せずに電流を測定できる測定器です。デジタルマルチメーターで電流を測定する場合は回路に直列に接続する必要がありますが、クランプメーターであれば通電したまま安全かつ簡単に電流値を確認できます。近年は、電流クランプ機能を搭載したデジタルマルチメーターも増えており、境界はやや曖昧になりつつあります。頻繁に電流測定を行う現場では、両方の機能を1台でまかなえるクランプ付きモデルを選ぶと、持ち運ぶ機器を減らすことができます。
絶縁抵抗計との違い
絶縁抵抗計(メガー)は、電気設備の絶縁状態を確認するために、高い電圧をかけて抵抗値を測定する専用の測定器です。デジタルマルチメーターの抵抗測定機能とは異なり、感電・漏電のリスクを事前に発見する目的に特化しているため、電気設備の定期点検では別途用意する必要があります。
オシロスコープとの違い
オシロスコープの選び方と買取相場でも解説している通り、オシロスコープは時間軸での波形変化を観測する測定器です。デジタルマルチメーターがその瞬間の数値を確認するのに対し、波形のタイミングやノイズまで確認したい場合はオシロスコープが必要になります。
デジタルマルチメーターを選ぶ際の主要チェックポイント
デジタルマルチメーターは価格帯の幅が広く、数千円の入門機から数十万円の高確度なベンチ型まで様々です。用途に合った機種を選ぶために、確認しておきたいポイントを紹介します。
確度(精度)
確度は、測定値がどれだけ真の値に近いかを示す最も基本的な仕様です。「±(0.5%+2digit)」のように表記され、数値が小さいほど高精度であることを意味します。品質保証や研究開発の用途では、この確度の高さが機種選定における最重要ポイントになります。日常的な点検用途であれば、一般的なハンディタイプの確度でも十分なケースがほとんどです。
分解能・表示桁数
分解能は、測定器が識別できる最小の変化量を示します。表示桁数が多いほど、より細かい変化を読み取ることができますが、桁数が多いからといって必ずしも確度が高いとは限らない点には注意が必要です。分解能と確度は別のスペックとして、それぞれ確認することが大切です。カタログには「6000カウント」のような表記で分解能が示されることもあり、数値が大きいほど細かい読み取りが可能になります。
測定レンジ(電圧・電流・抵抗など)
直流電圧・交流電圧・直流電流・交流電流・抵抗といった基本項目に加え、測定したい対象の最大値・最小値をカバーできるレンジを備えているかを確認しましょう。特に電流測定では、対応する最大電流やヒューズの有無も重要な確認事項です。レンジを自動で切り替えるオートレンジ機能の有無も、現場での使いやすさに直結するポイントです。
追加測定機能(容量・周波数・温度・ダイオードなど)
多くのデジタルマルチメーターには、静電容量、周波数、温度、ダイオードチェック、導通チェックといった追加機能が搭載されています。日常業務でどの機能を頻繁に使うかを洗い出し、必要な機能が過不足なく揃っている機種を選ぶことが、無駄のない選定につながります。
真の実効値(True RMS)対応
交流波形が正弦波でない場合(インバーター機器の出力など)、True RMS(真の実効値)に対応していない安価な機種では、正確な値を測定できないことがあります。産業用途で歪んだ波形を扱う可能性がある場合は、True RMS対応の機種を選ぶことをおすすめします。
安全規格(CATカテゴリ)
デジタルマルチメーターには、感電や事故を防ぐための安全規格として「CATカテゴリ」が定められています。測定する電源の種類や設置場所によって必要なCATカテゴリ(CAT II、CAT III、CAT IVなど)が異なるため、用途に合った安全規格を満たす機種を選ぶことが欠かせません。低い安全規格の機種を高圧側の測定に使用すると、事故につながる危険があるため、価格だけで選ばず必ず確認するようにしましょう。
用途別に見るおすすめの選び方
電気工事・現場配線の点検用途
現場での配線点検や電気工事では、耐衝撃性や防塵防水性能、CAT IIIやCAT IVに対応した安全性の高いハンディタイプが適しています。持ち運びやすさとバックライト付き表示など、現場での視認性も重視したい点です。手袋をしたままでも操作しやすい大きめのボタン配置や、片手で保持しやすい形状かどうかも、実際の作業効率に影響します。
研究開発・ラボでの精密測定用途
研究開発の現場では、確度・分解能ともに高いベンチ型のデジタルマルチメーターが選ばれる傾向があります。PCと接続してデータを記録・解析できる通信インターフェースを備えたモデルも、実験データの管理という点で重宝されます。長時間にわたる連続測定やロギングを行う場合は、内部メモリの容量や記録間隔の設定範囲も確認しておくとよいでしょう。
設備保守・汎用点検用途
工場設備の日常点検など、幅広い用途に対応したい場合は、基本項目に加えて容量・周波数測定などの追加機能をバランスよく備えた中価格帯のハンディタイプが使いやすい選択肢になります。
測定前に確認しておきたい安全上の注意点
デジタルマルチメーターは手軽に使える測定器ですが、電気を扱う以上、安全確認を怠ると事故につながるおそれがあります。
レンジ設定を測定前に必ず確認する
電流レンジのまま電圧を測定してしまうなど、レンジ設定を誤ると、ヒューズが切れるだけでなく、感電や機器の損傷につながる危険があります。測定を始める前に、必ずレンジと測定モードが対象に合っているかを確認しましょう。
テストリードの差し込み位置を確認する
電流測定用の端子に差し込んだままの状態で電圧を測定してしまうと、大電流が流れて事故につながることがあります。測定項目を切り替える際は、テストリードの差込口も正しい位置にあるかをあわせて確認する習慣をつけましょう。
CATカテゴリを超える電源には使用しない
前述の通り、機種ごとに対応できるCATカテゴリが決まっています。定格を超える電源環境で使用すると、内部部品の破損だけでなく、使用者自身の安全にも関わるため、必ず対応範囲内で使用するようにしてください。
主要メーカーの特徴
デジタルマルチメーターも複数のメーカーから発売されており、それぞれに強みがあります。
フルーク(Fluke)
フルークは、現場向けのハンディタイプで世界的に高いシェアを持つメーカーです。耐久性と信頼性に定評があり、電気工事や設備保守の現場で幅広く採用されています。中古市場でも安定した需要があり、状態の良い個体は高値がつきやすい傾向があります。落下試験をクリアするほどの堅牢性を売りにしたモデルも多く、過酷な現場環境でも長く使い続けられる点が支持される理由の一つです。
キーサイト・テクノロジーと日置電機
キーサイトは研究開発向けの高確度なベンチ型モデルに強みを持ち、日置電機は国内メーカーとして高い信頼性とサポート体制を備えています。用途や予算に応じて、これらのメーカーも有力な選択肢となります。
デジタルマルチメーターの買取相場を左右するポイント
確度・機能の高さ
高確度なベンチ型モデルや、True RMS・通信インターフェースなど付加機能の多いモデルは、査定額も高くなりやすい傾向があります。逆に基本機能のみのエントリーモデルは流通量も多く、相場は比較的落ち着いています。特に工場や研究施設で複数台を一括導入していたような機種は、中古市場でもまとまった需要が見込めることがあります。
テストリード・付属品の有無
本体だけでなく、専用のテストリードやケース、電流測定用のクランプアダプターが揃っていると、査定額にプラスに働きます。テストリードは消耗品でもあるため、状態の良いものが付属しているかどうかも確認ポイントです。取扱説明書や購入時の保証書が残っていれば、あわせて提示することで査定担当者の判断材料が増え、スムーズな査定につながります。
校正証明書・動作状態
他の測定器と同様、校正証明書の有無や、実際に電源を入れて正常に数値が表示されるかどうかが査定に影響します。校正記録が残っていれば、査定時にあわせて提示することをおすすめします。
デジタルマルチメーターの買取相場の目安
デジタルマルチメーターの買取価格は機種によって幅がありますが、大まかな価格帯のイメージとして以下のように整理できます。
エントリークラス(基本機能のみのハンディタイプ)
電圧・電流・抵抗など基本項目のみを備えたエントリーモデルは、流通量が多いこともあり、査定額は数百円〜数千円程度の水準になることが多いクラスです。
ミドルクラス(True RMS対応・追加機能搭載)
True RMS対応や容量・周波数測定など追加機能を備えたミドルクラスは、数千円〜1万円台程度の査定になることがあります。フルークなど人気メーカーの機種は、この価格帯でも高めの評価がつきやすい傾向があります。
ハイエンドクラス(高確度ベンチ型・通信機能付き)
研究開発向けの高確度なベンチ型モデルは、状態や年式次第で数万円規模の査定がつくこともあります。校正証明書が付属していれば、さらに高い評価につながりやすくなります。設置型で持ち運びに手間がかかる分、複数台まとめての出張査定・引き取りを依頼すると効率的です。
あくまで目安であり、実際の金額はメーカー・型番・状態・付属品によって変動します。正確な金額を知りたい場合は、型番と状態を伝えたうえで個別に査定を受けることをおすすめします。
高く売るための注意点
測定器の買取相場で紹介しているポイントに加え、デジタルマルチメーター特有の注意点もあります。
テストリードの被覆・プローブ先端を確認する
テストリードの被覆が劣化していたり、プローブの先端が摩耗していたりすると、安全性の面で評価が下がることがあります。査定に出す前に、目立つ劣化がないか確認しておきましょう。
💡 現場での体験談
筆者は以前、エンジニアとして回路の不具合を調査するデバッグ作業をしていた際、狭い箇所にどうしても測定箇所があり、無理やりテストリードを押し込んで測定しようとした結果、リードを破損させてしまったことがあります。年末の慌ただしい時期だったこともあり、そのまま回収業者に引き取ってもらい処分してしまいました。今振り返ると、本体自体は問題なく動作していたので、買取業者に相談すれば査定してもらえた可能性が高く、もったいないことをしたと感じています。壊れたのが一部だけなのであれば、処分する前に一度買取の可能性を確認してみることをおすすめします。
電池を確認し、液漏れがないようにする
長期間保管していたデジタルマルチメーターは、内蔵電池の液漏れによって内部が腐食していることがあります。使わない期間が長くなる場合は、電池を抜いて保管することをおすすめします。
複数台まとめての売却も検討する
工場や事業所で複数台のデジタルマルチメーターを使っている場合、買い替えのタイミングでまとめて売却することで、運搬コストの面で有利な条件になることがあります。
デジタルマルチメーターを長く使うためのお手入れのポイント
保管環境に気を配る
測定器の保管方法・注意点で紹介している温度・湿度対策は、デジタルマルチメーターにもそのまま当てはまります。特に湿気の多い環境での保管は、内部の腐食や表示の不具合につながることがあります。
ヒューズの予備を用意しておく
電流測定時の過大入力によってヒューズが切れることがあります。使用頻度が高い場合は、予備のヒューズを用意しておくと、いざという時にすぐ復旧できて安心です。
定期的な校正で確度を維持する
品質保証や研究開発の用途で使用する場合は、定期的な校正によって確度が維持されているかを確認することが重要です。測定器の校正とはもあわせてご参照ください。
よくある質問
古いアナログテスターでも買取してもらえますか?
動作する状態であれば買取対象になることがあります。ただし、現在の主流はデジタル方式であるため、需要や査定額はデジタルモデルに比べて限定的になる傾向があります。
校正証明書がないデジタルマルチメーターは売れませんか?
校正証明書がなくても買取は可能です。証明書がない場合は、動作確認の結果をもとに査定させていただきます。
壊れて表示が出ないデジタルマルチメーターも売れますか?
部品取りとしての買取が可能な場合があります。廃棄する前に、まずは状態をそのまま伝えて査定に出してみることをおすすめします。
複数のメーカーが混在していても、まとめて査定してもらえますか?
問題ありません。フルーク・キーサイト・日置電機など、メーカーが異なる複数台でもまとめて査定・買取が可能です。まとめて売却することで、運搬コストの面で有利になることもあります。
付属のケースがない場合、査定額に影響しますか?
ケースがなくても買取自体は可能ですが、本体を保護するケースが揃っていると、保管状態の良さの裏付けにもなり、査定でプラスに評価されることがあります。
まとめ
デジタルマルチメーターを選ぶ際は、確度・分解能・測定レンジ・True RMS対応・CATカテゴリといった仕様を、実際の用途に照らして確認することが大切です。買取相場においても、これらの機能の高さに加えて、付属品や校正証明書の有無、動作状態が査定額を左右します。
測定器買取センターでは、フルーク・キーサイト・日置電機をはじめ、幅広いメーカー・機種のデジタルマルチメーターを査定しております。校正切れや動作に不安がある機種でも査定可能ですので、お気軽にご相談ください。
引き出しの奥や工具箱の中に、使わなくなったデジタルマルチメーターが眠っていないか、この機会に一度確認してみてはいかがでしょうか。
