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測定不確かさとは?測定結果の信頼性をどう説明するか

校正・品質管理

測定不確かさとは・正規分布と信頼区間
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「この測定結果、どれくらい信頼できますか?」——取引先からそう尋ねられ、うまく答えられなかった経験はありませんか。特に「測定不確かさを教えてください」と言われると、専門的な響きに戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。測定不確かさは、ISO/IEC17025やJCSS校正証明書には欠かせない考え方でありながら、意外ときちんと説明できる方が少ないテーマでもあります。本記事では、測定不確かさの基本的な考え方から、取引先にどう説明すればよいか、そして測定不確かさを小さくする方法までをわかりやすく解説します。あわせて、筆者がセンサー開発の現場で測定不確かさの定義に苦労した経験もご紹介します。

校正の基礎知識については測定器の校正とは?JCSS認定校正・周期の決め方・費用相場を徹底解説もあわせてご参照ください。

測定不確かさとは何か

測定不確かさとは、ある測定によって得られた値が、真の値からどの程度の範囲でばらつく可能性があるかを、統計的な考え方にもとづいて数値化したものです。どれほど精密な測定器を使っても、測定には必ず何らかのばらつきが伴うため、「この値そのものが絶対に正しい」と言い切ることはできません。測定不確かさは、そのばらつきの幅を客観的に示すことで、測定結果の信頼性を第三者に伝えるための共通言語のような役割を果たしています。国際的にはGUM(計測における不確かさの表現のガイド)と呼ばれる文書で、その考え方や算出方法が標準化されています。

「誤差」との違い

「誤差」と「測定不確かさ」は混同されがちですが、意味合いが異なります。誤差は、測定値と真の値との差そのものを指す言葉ですが、真の値は通常知ることができないため、誤差を正確に求めることは実際にはできません。一方、測定不確かさは、真の値がどの範囲にありそうかを統計的な手法で推定した「範囲」を示すものであり、誤差を推定するための実務的なアプローチだと理解するとわかりやすいでしょう。「誤差はゼロにできないが、不確かさは見積もって管理できる」という考え方の違いを押さえておくと、以降の説明が理解しやすくなります。

なぜ測定不確かさが重要なのか

ISO/IEC17025・JCSS校正証明書での必須記載事項

校正機関の技術能力を国際的に認める規格であるISO/IEC17025では、校正証明書に測定不確かさを記載することが求められています。日本国内のJCSS(計量法校正事業者登録制度)認定校正証明書にも、必ず測定不確かさの記載があります。これは、校正結果がどの程度の幅で信頼できるかを、証明書を受け取る側が正しく判断できるようにするためです。

取引先・監査での説明責任

自動車部品や医療機器など、高い品質保証が求められる業界では、取引先の監査やISO9001・IATF16949といった品質マネジメントシステムの審査の中で、測定不確かさについて説明を求められる場面があります。「校正しているから大丈夫」という説明だけでは不十分で、その測定結果がどの程度の信頼性を持つのかを、数値の根拠とともに説明できることが求められます。監査の場でこの説明にとどまってしまい、追加の是正対応を求められたという声も少なくありません。

品質保証・トレーサビリティの担保

測定不確かさを正しく把握しておくことは、製品の合否判定基準に対して十分な余裕があるかどうかを判断するうえでも重要です。測定不確かさを考慮せずに、規格値ギリギリの数値で合格と判定してしまうと、実際には不良品を良品として出荷してしまうリスクが生まれます。

測定不確かさに影響する主な要因

測定不確かさは、単一の原因ではなく、いくつもの要因が積み重なって生じます。代表的な要因を知っておくことで、どこを改善すれば信頼性を高められるかが見えてきます。

校正に用いた基準器の不確かさ

測定器を校正する際に使用した基準器そのものにも、わずかながら不確かさが存在します。この基準器の不確かさは、校正された測定器の不確かさに直接影響するため、より上位の(不確かさの小さい)基準器で校正するほど、測定器自体の信頼性も高くなります。これは国家計量標準を頂点とした「トレーサビリティ」の考え方とも直結しており、上位の基準にさかのぼれる校正であるほど、不確かさの根拠も明確になります。

測定器の分解能・繰り返し性

測定器が表示できる最小単位(分解能)や、同じものを繰り返し測定したときのばらつき(繰り返し性)も、測定不確かさを構成する要素です。デジタル表示の測定器であれば、最小表示桁の半分程度が分解能による不確かさの目安になります。同じ測定器・同じ対象物であっても、複数回測定すると微妙に値がばらつくことがありますが、これは測定器や測定手法そのものが持つ本質的な限界であり、機器が故障しているわけではありません。

💡 現場での体験談

筆者は以前、原油探査の現場で、原油成分分析用のセンサー開発に携わっていたことがあります。このセンサーはメタン・エタン・プロパンといった成分の含有量を百分率で表示するものでしたが、実際に開発を進める中で、分解能や測定不確かさをどう定義すればよいのか、非常に苦労した経験があります。成分ごとに検出特性や測定原理が異なるため、単純に「何パーセント刻みで表示できるか」だけでは不確かさを説明しきれず、各要因を一つずつ洗い出しながら検証を重ねる必要がありました。測定不確かさは机上の計算だけで簡単に決められるものではなく、実際の測定原理や条件を深く理解して初めて、納得のいく形で定義できるものなのだと思います。

環境要因(温度・湿度・振動など)

測定を行う環境の温度や湿度、振動なども測定結果に影響します。測定器の保管方法・注意点で紹介したような温度・湿度管理は、日々の測定不確かさを小さく保つという観点からも意味のある取り組みです。

測定者による技量のばらつき

同じ測定器を使っていても、測定者の技量や測定方法の違いによって結果にばらつきが生じることがあります。測定物の当て方、力の加減、目線の角度といった細かな癖が結果に影響することもあり、標準化された測定手順を整備し、測定者への教育を行うことで、このばらつきを小さくすることができます。複数の担当者が同じ測定器を使う職場では、定期的に測定結果を突き合わせて確認する「技能比較」を行うことも有効です。

測定不確かさの表し方

標準不確かさと拡張不確かさ

個々の要因から求めた不確かさを組み合わせたものを「合成標準不確かさ」と呼びます。これに、後述する「包含係数」を掛け合わせたものが「拡張不確かさ」で、校正証明書に記載されるのは、通常この拡張不確かさです。

包含係数k=2、95%とはどういう意味か

校正証明書には「拡張不確かさ U=±0.02mm(k=2)」のような記載を目にすることがあります。この「k=2」は包含係数と呼ばれるもので、正規分布を仮定した場合、k=2はおよそ95%の信頼の水準で真の値がその範囲に含まれることを意味します。つまり、「真の値は、表示された測定値からこの範囲内に、95%程度の確率で収まっていると考えられる」という意味だと理解すると、社内外への説明がしやすくなります。なお、包含係数がk=3であれば信頼の水準はおよそ99%まで上がりますが、その分、示される不確かさの範囲(幅)も広くなる、というトレードオフの関係にあります。

取引先にどう説明すればいいか

数値の根拠とセットで伝える

「不確かさは±0.02mmです」と数値だけを伝えるのではなく、「校正証明書に記載されている拡張不確かさで、95%の信頼度でこの範囲に収まると考えられる数値です」というように、根拠となる考え方もあわせて伝えると、相手の理解も納得感も高まります。数値の意味を説明できるかどうかで、担当者としての信頼度も大きく変わってきます。

校正証明書をそのまま提示する

自社で口頭説明するよりも、JCSS認定校正証明書など、第三者機関が発行した書類をそのまま提示するほうが、客観性・信頼性の面で説得力があります。取引先から測定不確かさについて質問された際は、まず校正証明書の該当箇所を一緒に確認しながら説明するとスムーズです。証明書のコピーをあらかじめ手元に用意し、質問された際にすぐ提示できるようにしておくだけでも、対応の印象は大きく変わります。

専門用語をかみ砕いて伝えるコツ

「標準不確かさ」「包含係数」といった専門用語をそのまま使うと、相手によっては伝わりにくいことがあります。「測定した値は、だいたいこのくらいの幅の中に収まっていると考えられます」というように、日常的な言葉に置き換えて説明すると、専門知識のない相手にも伝わりやすくなります。

自社で判断が難しい場合は校正機関に相談する

測定不確かさの算出や説明に自信が持てない場合は、校正を依頼している機関や専門業者に相談するのも一つの方法です。校正証明書の読み方や、取引先への説明資料の作り方についてアドバイスをもらえることもあります。

測定不確かさを小さくする方法

適切な周期で校正を行う

校正の間隔が空きすぎると、測定器の経年劣化によって不確かさが大きくなっている可能性があります。測定器の耐用年数はどのくらい?買い替えのタイミングの見極め方でも触れているように、校正結果の調整量の推移を確認しながら、適切な周期を維持することが不確かさの抑制につながります。使用頻度や精度要求の高さに応じて周期を短くするなど、一律の年数にこだわらない柔軟な運用も検討する価値があります。

保管・使用環境を整える

温度・湿度が安定した環境で測定器を保管・使用することで、環境要因による不確かさの増加を抑えることができます。日々の保管環境を見直すことは、地味に見えて測定不確かさの改善に効果的な取り組みです。

より上位の基準器で校正する

校正を依頼する機関を選ぶ際、より不確かさの小さい上位の基準器を保有しているかどうかも、選定のポイントになります。特に高精度な測定が求められる用途では、JCSS認定を受けた校正機関に依頼することで、より小さい不確かさでの校正結果を得られる場合があります。

測定不確かさと合否判定の関係(ガードバンディング)

測定不確かさを理解するうえで欠かせないのが、製品の合否判定にどう影響するかという視点です。測定値が規格の上限・下限ぎりぎりに位置している場合、測定不確かさを考慮すると、実際には規格を外れている可能性も、規格内に収まっている可能性も両方あり得ることになります。

ガードバンドという考え方

この問題に対応する代表的な方法が「ガードバンディング」です。これは、規格の上限・下限から測定不確かさの分だけ内側に余裕(ガードバンド)を設け、その範囲内に収まっていて初めて合格と判定する考え方です。逆に、不確かさの分だけ外側まで見て不合格と判定する運用が取られることもあり、どちらの考え方を採用するかは、品質保証上のリスクをどう捉えるかによって変わってきます。不良品を良品と判定してしまうリスクを重視するか、良品を不良品として扱ってしまう過剰判定のリスクを重視するかによって、適した運用方法は変わります。

取引先との合意形成が重要

ガードバンディングの採用有無や基準は、社内だけで決めるのではなく、取引先の品質保証部門とすり合わせておくことが望ましいとされています。特に自動車部品や医療機器のように厳格な品質保証が求められる業界では、契約や仕様書の段階で合否判定基準の考え方を明確にしておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

具体例で見る測定不確かさの考え方

言葉だけではイメージしづらい場合もあるため、簡単な例で測定不確かさの考え方を確認してみましょう。

例:ノギスで部品の寸法を測定するケース

あるノギスの校正証明書に「拡張不確かさ U=±0.02mm(k=2)」と記載されていたとします。このノギスで部品を測定し、10.00mmという値が得られた場合、実際の寸法(真の値)は、9.98mm〜10.02mmの範囲内に、およそ95%の確率で収まっていると考えられる、という読み方になります。

公差との比較で見えてくること

この部品の公差が10.00mm±0.01mmだったとすると、測定不確かさ(±0.02mm)のほうが公差(±0.01mm)よりも大きいことになります。この場合、測定値が公差の中心にあったとしても、実際の寸法が公差を外れている可能性を否定できません。このように、測定不確かさと公差の大きさを比較することで、その測定器で本当にその判定基準を扱えるのかどうかを見極めることができます。

より精度の高い測定器が必要になるケース

上記の例のように、測定不確かさが公差に対して大きすぎる場合は、より不確かさの小さい(高精度な)測定器への切り替えや、複数回測定して平均を取るといった対策を検討する必要があります。一般的な目安として、測定不確かさは公差の3分の1から10分の1程度に収まっていることが望ましいとされています。この比率はTUR(Test Uncertainty Ratio、テスト不確かさ比)と呼ばれる考え方にも通じるもので、測定器の選定段階からあらかじめ意識しておくと、後になって「精度が足りない」という事態を避けやすくなります。

機種選定の際に確認すべき仕様は測定器の種類によって異なります。例えばオシロスコープであれば時間軸確度やサンプリングレート、デジタルマルチメーターであれば分解能や確度、スペクトラムアナライザーであれば周波数確度、ネットワークアナライザーであれば校正キットの精度が、測定不確かさを左右する主な要素になります。

よくある質問

測定不確かさが記載されていない校正証明書は問題がありますか?

ISO/IEC17025に基づくJCSS認定校正証明書には、測定不確かさの記載が必須です。記載がない場合、JCSS認定を受けていない一般校正である可能性があるため、証明書の発行元や認定の有無を確認することをおすすめします。

測定不確かさはどのくらいの数値であれば問題ないのですか?

一律の基準はなく、製品の合否判定基準に対して十分な余裕があるかどうかで判断します。判定基準に対して測定不確かさの占める割合が大きい場合は、より精度の高い測定器への切り替えや、上位の基準器での校正を検討する必要があります。

社内で測定不確かさを計算することはできますか?

専門知識があれば社内での算出も可能ですが、要因の洗い出しや統計的な計算にはある程度の専門性が必要です。自信がない場合は、校正機関や計量士に相談しながら進めることをおすすめします。

測定不確かさと精度・確度はどう違いますか?

「精度」や「確度」も測定結果の良し悪しを表す言葉ですが、定義が曖昧に使われることが多い言葉でもあります。国際的な計量用語では、測定値のばらつきの小ささを「精密さ」、真の値との近さを「正確さ」と呼び分けており、測定不確かさはこれらを統合的に、数値として定量化したものと位置づけられます。会話の中では厳密に使い分けず、資料や証明書上の正式な数値としては測定不確かさを参照するとよいでしょう。

測定不確かさは毎回の測定ごとに変わるものですか?

校正証明書に記載される測定不確かさは、その校正時点における測定器の状態や校正環境をもとに算出された値です。使用環境や経年劣化によって実際の測定不確かさは変動しうるため、校正証明書に記載された数値をいつまでも同じ条件でそのまま使い続けるのではなく、次回の校正時に更新された数値を確認することが望ましいとされています。

まとめ

測定不確かさとは、測定結果がどの程度の範囲で信頼できるかを統計的に示す考え方であり、校正機関の基準器・測定器の分解能・環境要因・測定者の技量など、複数の要因が積み重なって生じます。取引先への説明では、数値だけでなく根拠や校正証明書とあわせて伝えること、専門用語をかみ砕いて説明することが信頼を得るポイントです。

測定器買取センターでは、校正証明書付きの測定器の査定・買取も承っております。買取相場の決まり方もあわせてご確認いただきつつ、測定不確かさや校正に不安のある測定器の扱いについてお悩みの際は、無料査定よりお気軽にご相談ください。

測定不確かさは一見難しい概念に思えますが、「この数値はどのくらいの幅で信頼できるのか」を示すものだと捉えれば、取引先への説明もぐっとシンプルになります。校正証明書を受け取ったら、まずは記載されている拡張不確かさの数値に目を通す習慣をつけてみてください。

監修者

松本 悠利(Ekuipp株式会社 代表取締役)
2018年の創業以来、中古工作機械・測定器の買取事業を運営し、現場での査定実績をもとに本記事の内容を監修しています。詳しいプロフィールは会社情報をご覧ください。

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